他の国で商標登録する方法として、
(1) 商標登録をしたい国に、個別に商標出願し、登録する方法
(2) マドプロ(マドリッド協定議定書)に基づく国際登録により、商標登録する方法
この2つの方法があります。詳細な説明は、こちら。
ここでは、この2つの方法のうち、(2)のマドプロに基づく国際登録によって、他国で商標登録する手続きの流れについてご説明いたします。
日本の企業または個人がマドプロに基づく国際登録をするにあたっては、まず大前提として、その基礎となる日本での商標出願(または防護標章登録出願)または商標登録(または防護標章登録)がなされている必要があります。
マドプロに基づく国際登録出願は、日本での商標出願または商標登録等のいずれかを基礎として出願することになります。
ここで、「日本での商標出願または商標登録のいずれかを基礎として」とは、どういう意味でしょうか?
マドプロに基づく国際登録出願の願書(MM2フォーム)には、下記について記載する項目があります。
BASIC APPLICATION OR BASIC REGISTRATION
Basic application number / Date of the basic application
Basic registration number / Date of the basic registration
日本語では、「基礎出願または基礎登録」と呼ばれており、基礎出願または基礎登録の、番号および日付を記載しなければなりません。
日本での商標出願(または防護標章登録出願)が基礎出願であり、日本での商標登録(または防護標章登録)が基礎登録となります。
そして、マドプロに基づく国際登録出願は、この日本での商標出願または商標登録との関係で、次の3つの条件を満たしていなければなりません。
マドプロに基づく国際登録出願は、日本での商標出願または商標登録と、
つまり、マドプロに基づく国際登録出願は、日本での商標出願または商標登録との同一性(指定商品・役務については、同一またはその範囲内であること)が求められるのです。これが、上述した「日本での商標出願または商標登録のいずれかを基礎として」という意味になります。
マドプロに基づく国際登録出願の願書を提出すると、これら3条件を満たしているか、日本の特許庁が審査します。
このように、マドプロに基づく国際登録により外国での商標登録をする場合には、日本国内での商標出願または商標登録が必要であり、かつその商標出願または商標登録と同一(指定商品・役務については、同一またはその範囲内)であることが要件となります。
マドプロに基づく国際登録により外国での商標登録する可能性がある場合には、国内での商標出願を準備する際にこれらのことを念頭に置いて、商標出願の内容を決めることをお勧めいたします。
国際登録出願の手数料を、WIPO国際事務局に納付します。支払い通貨は、スイスフランです。
手数料の納付金額の計算は、WIPOのウェブサイトにある「Fee Calculator」で行うと便利です。
締約国ごとに支払いが必要な手数料の種類・金額が異なりますので、納付すべき手数料の合計金額を算出するにあたっては、上述の「Fee Calculator」を使って確認することをお勧めいたします。
納付方法は、次の2つのいずれかを選べます。
マドプロによる国際登録の制度を継続的に利用している会社や事務所等では、WIPOへの手数料の納付が頻繁に発生するため、国際事務局に口座を開設しているところが多いかもしれません。手数料の支払いが発生した際、口座からの引落しを指示するだけでよいという納付方法は便利ですし、かつ銀行等へ支払う送金手数料等の削減にもつながるため、活用されているのではないかと考えます。
一方で、それほど頻繁にはWIPOへの支払いが必要でない場合などは、WIPOの銀行口座への振込みによって納付する方法が、一般的に使われているのではないでしょうか。
国際登録出願に必要な書類を準備し、日本の特許庁に提出します。
上記のほか、以下の場合には、次の書類が必要となります。
基本的には、特許庁がMM2フォームを受領した日が、国際登録日となります。
日本の特許庁は、基礎出願または基礎登録と比較して、上述の同一の条件を満たしているかを主に確認します。
同一の条件を満たしていない場合や、その他の方式的な不備が見つかった場合は、通知がなされます。
その後、日本国特許庁は受理した願書を、WIPO国際事務局に送付します。
日本国特許庁から送付された国際登録出願の願書を受領後、今度はWIPO国際事務局において審査がなされます。
WIPO国際事務局では、主に以下の点が審査されます。
審査が完了すると、「国際登録簿」に記録がなされ、指定国に指定されたことを知らせる通報がなされます。
通常の商標出願と同様に、指定された国々で、その国の法律・基準等に基づき、審査・異議申立の公告等がなされます。
マドプロでは審査期間が決まっており、各指定国は、拒絶理由が見つかった場合には、国際事務局が指定通報を送付した日から1年または18カ月以内に、国際事務局経由で、出願人に暫定的拒絶通報(Notification of Provisional Refusal)を送付します。
拒絶の通報がなされた場合には、多くの場合、その通報をした国の資格を有する弁護士・弁理士などに依頼して、その国の特許庁を相手として、拒絶理由を解消するための対応をする必要があります。
審査の結果、保護が認められると、その指定国において、国際登録日から10年間が権利期間として保護されます。
存続期間は、国際登録日から10年です。権利期間が満了する前に、更新手数料を支払うことで、更に10年間、各指定国において商標が保護されます。