アフリカの広域商標制度

 

アフリカ諸国で商標権を取得する場合、アフリカにおける地域的な枠組みとして設けられた広域商標制度を利用するという方法があります。

アフリカには、OAPIとARIPOという2つの機関によって広域商標制度が設けられています。

この2つの制度は、加盟国も違えば、制度の特徴も大きく異なります。ここでは、各制度の概要や加盟国についてご紹介いたします。

 

OAPI

一つ目は、アフリカ知的財産機関 the Organisation Africaine de la Propriété Intellectuelle。OAPIと呼ばれています。

 

主にフランス語圏である旧フランス植民地であった国々で構成されています。

 

OAPIによる商標出願をし、商標登録がされると、一つの商標権ですべての加盟国に効力が及ぶことになります。

逆に、OAPIに加盟する一部の国でのみ商標登録したい場合であっても、国を指定して保護を求めることはできません。

また、OAPI加盟国には、国ごとの商標登録機関がないため、国ごとに個別に商標出願することもできません。

 

出願後、絶対的拒絶理由のみ審査が行われ、相対的拒絶理由についての審査はなされません。つまり、他者の類似する商標が既に登録されていても、商標登録がなされるということになります。

ですので、自己の商標について有効な商標権を所有している場合でも、抵触する商標登録を排除するために、商標公報(Official Gazette)をウォッチングしておくことが必要となります。抵触する商標登録が見つかった場合には、異議申立の手続きを視野にいれた検討が必要です。

 

 OAPIの加盟国は、現在17ヵ国(2018年12月21日現在)

 

ガボン、カメルーン、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、コモロ、コンゴ、赤道ギニア、セネガル、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、マリ、モーリタニア

 

尚、OAPIは、マドプロに加盟していますので、OAPI加盟国で商標を保護したい場合には、マドプロの国際出願においてOAPIを指定するという方法もあります。

一方、いずれの加盟国も、国自体としてはマドプロに加盟していません。

 

ARIPO

ARIPOとは?

もう一つは、アフリカ広域知的財産機関 African Regional Intellectual Property Organization。ARIPOと呼ばれています。

 

ARIPOは、アフリカの主に英語圏の国々によって構成されています。

ARIPOの加盟国は現在19ヵ国ですが、そのうち14ヵ国がイギリス連邦(the Commonwealth)の加盟国です。ARIPOは、元々大英帝国の自治領、元植民地であった国々を主な構成国としているという特徴を有することがわかります。

 

ARIPOの加盟国は、現在19ヵ国(2018年12月21日現在)

 

ウガンダ、エスワティニ(旧スワジランド)、ガーナ、ガンビア、ケニア、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジンバブエ、スーダン、ソマリア、タンザニア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、モザンビーク、リベリア、ルワンダ、レソト

 

ARIPOによる商標登録

ARIPOによる商標出願にあたっては、願書に保護を求める国を指定し、商標登録がなされます。マドプロの国際登録と似たシステムといえるでしょう。

 

ここで注意していただきたいのは、上記19ヵ国すべてのARIPO加盟国を指定できるわけではないということです。

商標については、1993年標章の保護について採択されたバンジュール議定書(Banjul Protocol)を締結した国のみが、指定可能です。

ARIPOの19の加盟国中、このバンジュール議定書の締約国は以下の10ヵ国しかありません(2018年12月21日現在)。

 

ARIPOによる商標出願で指定できる国(10ヵ国)

国内法に規定あり(内4ヵ国):

ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、マラウイ

 

国内法に規定なし(内6ヵ国):

ウガンダ、エスワティニ、サントメ・プリンシペ、タンザニア、リベリア、レソト

 

さらに、上記で「国内法に規定なし」として列挙した国々については、ARIPOによる商標登録について国内法等に明記されていないようです。つまり、それらの国に関して、ARIPOによる商標出願で指定国として指定し、商標登録がなされたとしても、その商標登録の効力が実際にその国で認められるのか否かについては明らかとなっていないと言えるでしょう。規定・判例等で明確にならない限り、商標登録されていても安心できるとは言えません。

 

マドプロ出願を使って商標登録することもできる?

これら10ヵ国で商標を保護したい場合、マドプロ出願を使って商標登録することができる国はあるのでしょうか?

 

ARIPOによる商標出願で指定できる国(10ヵ国)

国内法に規定あり(内4ヵ国):

マドプロ出願もできる国: ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、マラウイ(全4ヵ国)

 

国内法に規定なし(内6ヵ国):

マドプロ出願もできる国: エスワティニ、サントメ・プリンシペ、リベリア、レソト(内4ヵ国)

マドプロには加盟していない国: ウガンダ、タンザニア(内2ヵ国のみ)

 

つまり、ARIPOによる商標出願で指定できる国10ヵ国中、ウガンダ、タンザニアの2か国を除いては、マドプロ出願を使って商標登録をすることができます。 

 

このような点を考慮すると、これらARIPO加盟国で商標登録をしたい場合には、まずはマドプロ加盟国であるか否かを確認する。そして、マドプロ加盟国であるなら、マドプロを使って商標の保護を求めるという方法が、より一般的なのではないかと考えます。

 

しかし、上述の通り、商標権の効力に関して国によっては明らかとなっていない点もあるようですので、ARIPO諸国での商標の保護をご検討されている場合には、どの国での保護が必要か(将来的な使用予定国も含め)、費用、手続き、効力などを総合的に判断して、国・方法を選択するとよいでしょう。 

 

ご不明な点がございましたら、いつでもご連絡ください。