マドプロ出願の基礎となる国内商標出願をする際の3つの注意点

マドプロ出願の基礎となる国際商標出願をする際の3つの注意点

日本以外の国で商標登録をする方法として、マドプロ(マドリッドプロトコル)を利用した国際登録出願(略して、マドプロ出願)をするという方法があります。

 

マドプロ出願の手続きをさっそく始めよう!

と言っても、すぐに進められるわけではありません。

 

マドプロ出願をするためには、まずなくてはならないのは、

本国における商標出願・商標登録です。

 

お考えの商標について、既に商標出願・商標登録がなされている場合には、その出願・登録に基づいてマドプロ出願ができます。

 

一方、お考えの商標について、日本で商標出願をまだしていない場合には、まずは日本での商標出願から始める必要があります。

 

本ブログでは、マドプロ出願の基礎としての国内商標出願をこれから準備するご担当者様向けに、注意していただきたい3つのポイントについて解説いたします。

 

マドプロ出願と国内商標出願の関係は?

マドプロ出願するには、必ず本国における商標出願又は商標登録が必要です。

本国における商標出願又は商標登録は、基礎出願・基礎登録と呼ばれています。

この基礎となる国内での商標出願・商標登録を土台としてマドプロ出願を行います。

 

マドプロ出願する商標は、国内で商標出願・商標登録のなされた商標と同一でなければなりませんし、名義人も同一人でなければなりません。

商品・サービスについては、国内の商標出願・商標登録で指定した商品・サービスの範囲内とする必要があります。

 

つまり、国内の商標出願・商標登録の内容が、マドプロ出願の内容を決める基礎となり、その内容を制限することになります。

 

注意すべきポイント#1 ~ 商標はどうするか

シンプルな文字の商標は、識別性に注意する

他国で登録したい商標が英語やアルファベットからなる文字の場合、他国において「識別性」が問題になることがあります。

 

日本においては、「識別性」のないマーク等については、自己と他人の商品・サービスとを区別することができないものとして、出願しても商標登録できません(商標法第3条)。

例えば、商品やサービスの品質、特徴などをそのまま記載したものは、「識別性がない」と判断され、商標登録できません。

 

識別性の判断基準は国によって異なりますし、日本より審査が厳しい国は多いです。

 

アルファベット文字の商標の場合には、他国において「識別性がない」と判断される例を見かけます。

ある商品・サービスに関し、同業他社においても使用されるような語・表現ではないかといった観点などから、国内商標出願をする段階で十分に検討することをお勧めいたします。

 

 

ロゴなどの図形要素のある商標は、色を検討する

文字のロゴや、図形のみのロゴ、文字と装飾的要素が組み合わされた商標の場合、特定の色のロゴのみを使用している場合が多いかと思います。

 

マドプロ出願をするに当たっては、商標の色をどうするかという問題があります。

通常使用している特定の色のロゴで出願するのか、それとも、そのロゴを白黒やグレースケールとしたもので出願するのか、どちらにするかという点です。

 

色彩の扱いは、国によって異なります。

 

ある特定の国で商標登録するのであれば、その国の制度に合わせて、色を決めればよいのですが、マドプロ出願の場合、国際登録された内容で、指定した国に商標出願を広げていくということになりますので、特定の国のみの制度に合わせて出願すればよいのではありません。

 

マドプロ出願を行う商標は、国内商標出願と同じ色の商標となります。

ですので、国内商標出願の段階で、色彩をどうするかについても検討する必要があります。

 

私は、白黒やグレースケールの商標で基礎となる日本の商標出願をすることをお勧めするケースが多いです。

 

 

 

注意すべきポイント#2 ~ 商品・サービスの選び方

マドプロ出願では、商品・サービスを英語で記載します。

その場合に、国内の商標出願・商標登録の商品・サービスの範囲を超えることはできません。

といっても、国内の商標出願の指定商品・サービスを直訳する必要はありません。

 

他国において、どのような商品・サービスの記載が認められるかは、国によって異なります。

ニース国際分類のアルファベット一覧表にリストされた商品・役務であれば、認められる国が多いです。

 

以上を考慮すると、国内での商標出願・商標登録をするに当たっては、

なるべく広い概念をカバーする指定商品・指定役務を含めておくこと、

ニース国際分類のアルファベット一覧表にリストされた商品・役務についても、関連するものを含めておくことをお勧めいたします。

 

 

 

注意すべきポイント#3 ~ 国内で商標出願が拒絶されたら致命傷

国内の商標出願・商標登録とマドプロ出願の関係については、冒頭でも言及いたしました。

マドプロ出願は、国内の商標出願・商標登録にその商品・サービスの範囲等を縛られるだけでなく、その存続する運命をも国内の商標出願・商標登録に従属させられます。

 

 

セントラルアタック

 

国際登録の日から5年以内に、国際登録の基礎となった国内の商標出願が拒絶された場合や、国内の商標登録が取消された場合などには、取り消された範囲内で国際登録も取り消されます。

これを、「セントラルアタック」と言います。

 

日本の商標出願を基礎として、例えば50か国を指定してマドプロ出願を行った場合。

その後、日本の商標出願が拒絶されると、国際登録は取り消され、さらには50か国においても出願が取消されてしまいます。

 

これが数か国であったとしても、日本国内の1出願が拒絶されることにより、時間と経費をかけて行ったマドプロ出願が、すべて取消されることになったとしたら、悔やんでも悔やみきれません。

 

このようにマドプロ出願による国際登録は、5年間はその基礎となる日本の商標出願・商標登録に従属します。

ですので、国内の商標出願をするに当たっては、商標登録は問題なく認められるのか、十分に確認する必要があります。

 

まとめ

マドプロ出願の基礎となる国内の商標出願をするにあたって、注意すべき点について解説いたしました。

外国でスムーズに商標登録できるよう、通常の商標出願をする場合よりも、しっかり検討を行うことが重要です。

 

執筆者:

トレードマークワゴン商標特許事務所

弁理士 本間 裕美